バングラデシュで急成長する革新的な学習塾UDVASH
UDVASHは、バングラデシュで急成長している理工系の学生を対象とした学習塾です。今回、UDAVASHの創業者であるMahmudul Hasan Sohagさんにお話を伺いました。Sohagさんは、利益至上主義の学習塾が多い中、バングラデシュの教育を変えたいという理念を掲げて実践する若きリーダーです。事業としても大成功しているSohagさんのお話は非常に刺激的でした。
Cocoro： UDVASHはバングラデシュで大きく伸びている学習塾だと聞いていますが、今、何名ほどの学生が通っているのでしょうか。
Sohag： 現在、約３万名の生徒が通っています。後期中等教育である９年生から大学受験までの子供達が、全国16拠点の教室で学習しています。
Cocoro： UDVASHをどうして始めたのですか。
Sohag： UDVASHは、私が大学１年の時に創業しました。バングラデシュの教育は暗記が中心で、考える力をつけさせるものではありませんでした。こうした暗記だけを教える学習は害以外の何者でもないと思い、自分で新しい学習の場をつくり、今の教育のあり方を変えたいと思い、自分で始めました。
私は、教育に関して自分の信念を持っています。教育は決して学科でいい成績を取ったり、技術を身につけるためにあるのではない。それでは勉強ができる人だけが「教育」を受けたことになる。私は、教育は一部の勉強ができる人のためだけにあるのではなく、全てのためにあるものであると思います。そして、人それぞれの「器」を育むことこそ、教育の神髄であると考えています。人の個性は千差万別であり、その「器」にあった生き方をすることが大切です。鳥に泳げと言ったり、魚に空を飛べと言われても無理があります。人間も一緒です。UDVASHではその思いを少しでも実現しようと考えました。
Cocoro： それは具体的には、どのような教育になりますか。
Sohag： ４つのモットーを掲げています。①自分で考えること、②あきらめないこと、③自信を持つこと、④倫理観を持つことです。暗記ではなく、理解をすることに重点を置き、考える訓練を徹底します。すぐに答えを渡して覚えさせるのではなく、あきらめずに考えさせます。他の学習塾は過去問をいかに暗記させるかに力点を置いていますが、当塾では過去問は使いません。また、特に４番目の倫理観を持つことにも重点を置いています。学習塾内で様々なクラブをつくり、社会に貢献できる機会を与えています。例えば献血などの簡単なことからですが、社会を見る目を育て、人を思いやる気持ちを育てるものです。
Cocoro： どのようにその理念を実現しているのでしょうか。
Sohag： 何よりも大事なことは、良い教師を採用することです。UDVASHの教師のほとんどが学生ですが、厳しい７段階の選考過程を経て、少数精鋭を選びます。昨年は、バングラデシュの理工系でトップ大学であるBUETからだけでも８００名の応募があり、選考の結果、２０名を選びました。基本的な学力があることは前提ですが、最も重視するのは教えることへの情熱と人間としての「器」です。最終選考では、３日間に渡る合宿で人物を徹底的に見ます。
採用された教師には、当塾の方針を理解してもらった上で、自由に授業をさせています。これによって教師である学生の創造性やリーダーシップを育むことも狙っています。昨年、NASAの月面で使えるロボット・コンテストにバングラデシュから選ばれた６名の内、３名は当塾の教師でした。
Cocoro：今後はどのような展開を考えているのですか。
Sohag： 私は学科による成績ではなく、人間の「器」を個性に応じて評価できるようなシステムで教育ができないか、挑戦したいと思います。そのために、現在、正規の教育から見放されているスラムの子供達を対象に学校を作る準備をしています。ここで子供達の生きる力を育み、それぞれの強みを生かしていくための方法論を模索したい。そこから社会を変えていきたいと思います。
Cocoro：日本に期待することはありますか。
Sohag： 私が外国の教育で最も関心があるのが、日本とフィンランドです。日本には是非行きたいと思います。ただ学科の教育法には興味はありません。むしろ、日本人の協調性があり、礼儀正しく、謙虚な人間性をどのように子供の頃から教えているのか、その点を大いに学びたいと思っています。
Cocoro：ありがとうございました。
【取材後記】
１８歳の時に創業し、現在３２歳のSohagさんは、筋が一本きちんと通っている理念と実践の人でした。実はSohagさんは、教育だけではなく自らのエンジニアとしてのスキルを生かして、技術の方でも様々なイノベーションも起こしており、７社のベンチャー企業群の会長でもあります。Sohagさんが解き放つエネルギーに終始圧倒され、また魅了されました。こういう人材がバングラデシュにはいるのですね。
