日本の中小企業における海外展開の動向と、バングラデシュの中小企業金融の現状について紹介したいと思います。 この調査を始める前、「企業の海外進出」と聞いて私がまず思い浮かべたのは、トヨタ、ソニーなど日本を代表するような一流メーカーや総合商社など、東証一部に上場する、いわゆる「大企業」でした。 失礼ながら、中小企業といえば、小さな町工場で、大企業の下請けとしてニッチな製品を生産しているといったイメージで、強いて海外との接点と言えば、大企業を通して中国などから原材料を輸入する程度だろうと。しかし最近では中小企業の海外展開はいよいよ本格化しつつあります。 経済産業省の調査によれば、海外現地法人を持つ企業のなかで(親会社が)資本金10億円以下の中小企業が占める割合はここ10年の間で10%近くも上昇しており、いまや海外現地法人を持つ企業の約25%は中小企業です。中小企業の海外展開をバックアップする各種の政策パッケージも整備されつつあり、この割合は今後もさらに増加していくことが見込まれます。 また、大企業といえども、海外で設立する現地法人の多くは中小規模です。前述の調査で、海外現地法人の資本規模別でみると、中小企業の割合は75%を超えます。つまり平たく言えば、海外にある日本の会社の4社に3社は中小企業ということになります。 さらに、4社に1社は親会社も中小企業です。当初の私のイメージは完全に覆りました。これから海外展開の主役は中小企業になっていくのかもしれません。
中小企業の海外進出状況について、今や海外現地法人を持つ企業の4社に1社は(親会社が)中小企業であり、海外進出が本格化している現状をご紹介しましたが、経営資源の限られている中小企業の海外での事業活動は大企業以上に困難を伴います。その最たるものが資金調達です。 商工総合研究所の調査によれば、中小企業の海外での資金調達で、現地地場銀行からの調達は10%にも満たないものです。現地邦銀からの資金調達は15%とそれなりに大きな役割を果たしているのですが、これは欧米や中国など邦銀が海外展開に積極的な一部の地域に限った話でしょう。 実際、ここバングラデシュに拠点を構える日本の金融機関は、三菱東京UFJ銀行、1行のみです。同行ダッカ駐在員事務所の行員の方も、バングラデシュで活動する日本の中小企業で地場銀行から資金を調達しているところは1社も知らないということでした。
なぜ、中小企業は資金調達に苦戦するのか?JICAの調査では、その制約要因として「厳しい担保要求」「高い金利水準」が指摘されています。 資金規模の小さな中小企業は、金融機関からすれば信用力が低いということになり、担保はある程度厳しく追及していかなければならない。これは国民の預金を元手に企業に貸し付ける銀行として、ある程度仕方のないことなのかもしれません。 バングラデシュの商業銀行の場合、担保原資の半分以上(約53%)が土地や工場などの不動産です。不動産の取得は外国企業にとって非常に困難な課題であり、中小企業であれば尚更です。 金利に関しても同様です。バングラデシュの大手商業銀行、Eastern Bank Limitedの行員の方の話では、中小企業向けの貸出金利は平均で18~19%、中小企業金融における同国最大手のBrac Bankに至っては24%にもなるということです。 バングラデシュは経済成長著しい新興国であり、インフレもかなりのスピードで進行しているので、日本の基準で考えてべらぼうに高いように見えるのは当然と言えば当然ですが、それにしてもこれは高すぎます。事業基盤の不安定な中小企業が、銀行から借りた1,000万円を1年後に1,200万円で返さなければいけないというのは、相当に厳しいハードルと言えるでしょう。 「担保」と「金利」。私たちは、この2つの要素が中小企業金融のネックだという結論に至りました。中小企業の海外での資金調達をバックアップする中で、厳しい担保・金利水準をいかに緩和するか、私たちが提案するスキームの成否を分けることになりそうです。
(インターン:田中)