村瀬誠さんがバングラデシュに戻ってこられました。 村瀬さんはバングラデシュでヒ素や塩害で十分な飲料水が確保できない貧困地域で、雨水を利用した安全な飲み水を確保すべく、画期的な雨水タンクの製造・販売のビジネスを展開しています。環境のノーベル賞と言われるロレックス賞を受賞され、世界的に著名な雨水利用の第一人者です。
今回、村瀬さんのお話で印象的だったのは、人と水、更には人と環境を巡る「哲学」でした。「汚い水でも技術を利用してきれいにする」という考え方は、目先だけをみた対症療法にすぎず、その延長線上では必ず限界がある。やはり根本的に、水の源泉をきれいにする考え方をとらないといけない。自然が生み出す水を大切にする意識がないままに、「どんな汚い水でもきれいにできる」という技術だけが発達したとしても、いずれ人類は行き詰まる。最後は、雨水利用が残された解決策になるであろうが、それとて空気の汚染が進めば難しい。
これから人類が見直すべきは、昔の人々の知恵であり、これに現代の科学の新しい光を照らし、次世代の人々に伝えていくことが大切であるとのお話でした。村瀬さんの雨水タンクは、まさにその哲学で開発されています。
「温故而知新、可以為師矣(故きを温ねて、新しきを知れば、以て師たるべし)」この孔子の言葉の意味を、現代の環境問題に敷衍した村瀬さんの強い意志であり、とても心に残る夕食会でした。 すでにダッカを出発して、ガンジス川支流の河口付近の町・モレルガンジへ向かい、現場の指揮を執られているとのこと。村瀬さんの現地の活動を応援しております。