ボリシャルから高速ボートで大河を下って約40分、更に運河を辿って内陸に入ると、静かで美しい田園風景の広がるカルシャー村に到着。ここでiDEの進めるNobo Jibon(英語でNew Lifeの意味)プロジェクトを視察しました。 カルシャー村ほどの僻地になると、村の農家が都市部に売りに行くことは、非常に困難です。これまで、この村は大きな市場から隔離された存在でした。
そこで、iDEは発想の転換を行います。市場へ行くのではなく、都市部のバイヤーに来てもらう仕組み、市場を呼び込むためのインセンティブづくりに注力したのです。 その戦略は至ってシンプルでした。「まずはトマト1品に絞って、方法論を考えよう。」トマトを買いにバイヤーがカルシャー村にくるためには、何をすべきか。その方法を徹底的に考え、試していく。しかも、地元の農民が主体となってこれを進めること。iDEはあくまでも側面支援に徹する。
最初に取り組んだのが、バイヤーが必要とするボリュームの確保です。カルシャー村の農民は、トマト栽培の分担を組織的に割り振り、安定的にトマトが一定のボリュームで供給されるシステムを作ります。次に、バイヤーが購入し、運搬しやすいように運河の側にCollection Point(農作物収集所)を設置しました。 当初、都市部のバイヤーへの働きかけはiDEが支援しましたが、バイヤーと農民が相互に信頼関係を築く中、農民が自主的に関係作りを構築できるようになってきました。広大な土地を利用し、高品質な農作物を大量生産することで、市場へアクセスする道筋が徐々に整備されてきています。
取り組みを始めて4年が経過し、今やトマト以外の農産物や水産物にも広がっています、現在取り組んでいるのが飼料用のトウモロコシ生産です。肥沃で、広い土地を利用して、バングラデシュ北部の畜産農家向けに販売する計画とのこと。近くの市場からも隔離されていた南部の僻地の農村が、北部の市場をターゲットに生産計画をたてるようになったことは、本当に素晴らしいことですね!